『FINAL FANTASY VII REMAKE』サウンドトラック発売記念!植松伸夫氏、野島一成氏、北瀬佳範氏 テーマソング「Hollow」インタビュー

2020年1月31日、23年前にオリジナル版『FINAL FANTASY VII』が発売されたこの日、同作のリメイク版に向け新たに息を吹き込まれたテーマソング「Hollow」が発表された。公式サイトのトレーラーで披露されたその楽曲は、原作の作曲家・植松伸夫氏による新曲で、同じく同作のシナリオライター・野島一成氏が作詞を担当している。世界に轟いたその楽曲の歌詞はリメイク版の翻訳者・セイビン ベンとジョン クロウにより英訳され、流暢な英語でエモーショナルなVocalを担当するのは人気バンド「Survive Said The Prophet」のYosh氏だ。

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当時、最先端の技術を駆使した圧倒的なグラフィックや、その壮大なストーリーで世界中にゲームファンを増やした作品――その待望のリメイク版がついに現実の物となり、再び世界を熱狂させている。今回はそんな『FINAL FANTASY VII REMAKE』のサウンドトラックの発売を記念し、作曲の植松伸夫氏、作詞の野島一成氏、プロデューサーの北瀬佳範氏に、テーマソング「Hollow」についてインタビューを決行。制作の裏に隠されたストーリーに迫った。

取材・執筆:アネモネ・モーニアン


リモートで行われた、インタビューの様子(イラスト:牧野良幸)

 

『FINAL FANTASY VII REMAKE』制作決定について


――今回は「Hollow」についてお話をお伺いさせていただくのですが、まずは『FINAL FANTASY VII REMAKE』(以下、『FF7R』)の制作が決定した事についてどう感じたかお伺いさせてください。

北瀬佳範 氏(以下、北瀬 ※敬称略) 僕は「やります」と手を挙げた側なので、お二方とはちょっとリアクションが違うかもしれませんね。

ここ10年位、他の作品のプロモーションで海外を周っている時に、ファンやメディアの方々から『FINAL FANTASY VII』(以下、『FFVII』)のリメイクはいつ出るのかと、あたかもリメイク版の制作が決まっているかの様に聞かれてきました。「全然予定は無いよ」と言い続けて来たんですけれども、「FF」シリーズ25周年のタイミングですかね……周年のタイミングって「次の5年はどうしていこう」って考えるタイミングなので、それをきっかけに、「そろそろ残りの人生考えたら、今やっとかないと作れないな……」と思い始めまして。そこからすぐに着手した訳じゃないのですが徐々に『FFVII』熱が盛り上がって、社内の開発チームのタイミングが丁度合った時期に、「じゃあやろう!」って思い立ちました。

そんな感じで、始まってからすぐにバーッと動き出した訳ではなくて、ゆっくりゆっくりな感じで、野島さんや植松さんにもお話をさせていただきました。

野島一成 氏(以下、野島  ※敬称略) 僕は以前から哲さん(『FF7R』ディレクター・野村 哲也氏)から「そんな事が出来たら良いね」なんて話は聞いてはいたので、いつかやるんだろうなと思っていました。なので、そんなに驚かなかったですね。

けど、ここまでやるとは思っていなかったので、そう言う意味では驚いています(笑)。もっとキャラをきれいにするとか、ハイレゾがもっとすごくなる!みたいな事になるだけだと思っていました。簡単に考えていたので、こんなに大事になるとは(笑)。

僕には『Compilation of FINAL FANTASY VII』の内容を全部一つにすると言う大いなる野望があったのですが、実際にやるとなると、これは大変な事になりましたね。

植松伸夫 氏(以下、植松  ※敬称略)  初めて聞いたのは結構前だったと思うんだよね。北ちゃん(北瀬氏)が話があるって言うんで、僕が仕事で六本木かなんかにいた時だよね。

北瀬 六本木のラジオでしたね。

植松 ラジオだ。

北瀬 六本木って言うと、我々なんか格好良いやつらみたいですね(笑)。

植松 あくまでお仕事でね(笑)。「その仕事の前に時間ください」って北ちゃんが来てくれて、そこで聞いて……それも今思えばずいぶん前だよね。

北瀬 ずいぶん昔でしたね。『FF7R』の制作発表は2015年だったのですが、少なくともそれよりも前でしたね。

植松 本当に覚えていないくらい前。「植松さん口軽いですから、絶対に言わないでくださいね!」って何度も念押された(笑)。

オーケストラやバンドのコンサートで海外に行くと、『FFVII』の曲ってどの国に行ってもみんな特別な思い入れがあるみたいで、ものすごく反応が熱いんですよね。他のタイトルももちろん好きではいてくれるんだけど。だからリメイクもやむを得ないだろうなあとは思いましたね。

僕らにとっては、当時のPlayStation第1作目の『FFVII』って衝撃的だった訳だけど、今現場で「FF」作っている人たちは、もうあのレベルでは満足出来る人達じゃないんで、「あそこはああしたい」「ここはこうしたいな」って、きっとみなさんあるんだろうなってまず感じましたよね。こんだけ期待されていたらやりがいもあるよね。僕もリメイクは「やるべきだ」と思いました。

――「片翼の天使」みたいな大人気曲でなくとも、どの世界の人も「血の跡」で「デデデデン(カカッ)」って歌えますもんね。当時はゲームファン以外も巻き込んで、音楽も世界共通言語になりましたよね。

 

幻の『FF7R』楽曲の存在


植松 話をもらった当初は全部をやろうとしてたの。で、とりあえずオープニングからここら辺を作りましょうって決まって実際に着手し始めて、作ってた最中にゲーム本体のスケジュールが変更になっちゃって、ちょっと間が空いちゃったのね。

で、その間にちょっと体調崩したりで色んな事を考えて、北ちゃんもさっき老い先がどうのこうのって言ってたけど、僕も現役であと何年出来るかって考えた時にね、もうゲームを1本丸々作る体力と精神力は多分もうそんなに残ってないなあって。ってのはどういう意味かって言うと、仕事としての音楽制作と、自分がやりたい音楽制作と、本当にバランスを取っていかないと、死ぬまで俺は自分のやりたかった音楽出来ないまま死んじゃうなあ、って思ったの。

そんなことを考えていた時に、「植松さんお待たせしました!再開します!」って……そのタイミングが合っちゃって。「人生の決断だ」ってすごく悩んでいた所、テーマソングだけでもって有難いお言葉をいただいて、是非やらせていただきたいとお返事しました。

――そうだったのですね。植松さんの幻の『FF7R』デモも聴いてみたいですね。

植松 ダメダメ。聴かせる所までは作り込んで無いっすよ。どうやったら新しい切り口で行けるかとか、そう言うアイディアを試している段階だったの。

――北瀬さんからも、植松さんに主題歌をご依頼された際のお話をお伺いさせてください。

北瀬 正式に『FF7R』の制作が決定して、最初に正式に連絡をしたのは植松さんでしたね。

野島さんとは他のお仕事でもご一緒させて頂いていたので、その中の雑談の延長で『FF7R』の話しは挙がったりしていたのですが、植松さんとはしばらくお会いしていなかったので。当時、植松さんにやっていただけなかったら『FF7R』は成り立たないと思っていたので、六本木の喫茶店で一番にお伝えしました。

確かに植松さんが言う通り、そこから実際に音楽を発注するまで、実は結構時間があったんです。一度お願いしてから、制作が開発の都合で一旦仕切り直しになって、空白の時間があった。で、その空白の時間を経て改めて植松さんに音楽をお願いしようとした時に先ほどのお話があって……ゲーム本編には元々の植松さんのメロディがありますので、社内のスタッフたちにアレンジを任せていただき乗り越えようと思いつつも、やっぱり『FF7R』には植松さんの新しいメロディを残したいと思いました。今回、原作には無かったテーマソングを入れようとは思っていたので、そこをお願いしたいと改めてお話をしました。

 

テーマソングの構想について


――テーマソングはどの様な内容で発注されたのですか?

北瀬 ディレクターの野村哲也が主題歌のイメージを持っていました。ミッドガルを脱出してエンディングを迎える事は決まっていて、ミッドガルの端の荒野に立った時に雨が降って来て、その時クラウドがどういう心情なのか、とだけをお伝えして野島さんと植松さんにそれぞれ作詞と作曲をお願いしました。3人ですよね。同時に。

――お二方に渡ったのは”荒野”と”雨”のキーワードだったんですね。

植松 そうですね。僕は”荒野”と”雨”のイメージしか無くて、クラウドの心情をどうやってそこに乗せるかがテーマでしたね。

北瀬 あとは当初から、男性Vocalで、英語歌詞と言う事も決まっていました。

植松 ああ、それもあったね。

――「FF」シリーズのナンバリングタイトルで、男性Vocalでの主題歌は初めてですよね。クラウドの心情を歌う為なのでしょうか?

北瀬 そこもありますね。今までは、女性のバラードが多かったので、そことは変えて行きたいと言う野村の意図もありました。

―― 制作の順番としては、曲を先に作られたのですか?

植松 そうですね。曲が先。

 

「Hollow」の音に込めた想い


――どの様に「Hollow」を完成させたか、作曲の流れをお伺いさせてください。

植松 美し目の曲を作るのは割と得意な方なんだけど、例えば、クラウドと荒野と雨の映像のウラに”Eyes On Me”みたいなメロディが流れてもちょっと違うでしょ?だからそれはもう……メロディもいくつか作ったんですよ。でもね、どれもなんか……キレイすぎる?感動しちゃう?自分で言うのもアレだけど(笑)。この場面って、グッと来ちゃいけないんじゃないのかなと思ったの。それよりも、サウンドでクラウドの不安感を出したかった。

僕の印象では、不安感って鍵盤楽器では出ないんですよ。ピアノってすごくピシッピシッって、スクエアな感じの印象で、もちろんシンセサイザーとか、すごく凝縮された音のイメージって言うのもあるんだけどね。そこで言うとアコースティックギターのジャラ~ンって鳴るストロークって、どこまでも広がって行くのよ。そのどこまでも広がる響きが、”ドミソ”とか安定した和音だと普通だけど、不安感のある音だったら面白いなって。だから今回は、どの和音の響きをメインに据えようかなってのはありました。

CにF#って言う音を加えた、C(#11)って言う非常に不安定な和音があるのね。それを冒頭から使おうって決めてからは、そこをメインに作り上げた感じですかね。不安定な感じを出す為に、レコーディングの楽器もちょっと荒っぽく、もっとルーズにしちゃっても良かったのかもって言う位。

――確かに、クラウドの不安定で無骨な感じが、頭のアコースティックギターからにじみ出ていて、一音目から掴まれますよね。

植松 最初のC(#11)の和音に加え、サビのメロディもそんなに展開が無くて、音程が上がる方向と、ちょっとした叫びとまでは行かないけど、そう言う所の痛々しさが出れば良いなって感じです。

――シャウト風のロングトーンですよね。編曲は福井さんがご担当されていますが、ご依頼された経緯をお伺いさせてください。

福井健一郎氏: 『FINAL FANTASY VII ADVENT CHILDREN』や、「Kiss Me Good-Bye -featured in FINAL FANTASY XII-」、「月の明り-FINAL FANTASYIV 愛のテーマ-」など、前作の主題歌の編曲も植松氏とのタッグで担当している。

植松 これまでも何曲か一緒にお仕事をしていて、安定したアレンジをいただけるので今回もお願いしました。

今回はちょっとね、福井くんに渡す時点で、僕がもう書き過ぎちゃってて……。例えば、メロディと和音だけ渡して「アレンジして」ってやり方もある訳じゃない。その場合はアレンジャーさんが結構自由に想像の翼を広げて、色々と膨らませて行けるのかもしれないけど、今回は僕がストリングスの対旋律まで全部きっちり書いちゃって……彼にはちょっと申し訳無い事をしたなあ。もっと、福井くんの豊かなイマジネーションをぶつけてもらっても良かったなあ。

――アレンジ発注の際はどの様なオーダーをお出しになったのですか?発注シートなどあったのでしょうか?

植松 発注シートは出さないで、midiデータを送って、「ひとつよろしく」って言いました。

「ああしてくれ、こうしてくれ」って僕はアレンジャーさんにあんまり言わないですね。ある程度方向性を言うくらいで。だってそうしないとその人の個性が発揮出来ないじゃないですか。「ここはこうして」とか言うなら「お前やれよ」って言われちゃう(笑)。

 

Vocal・Yosh(Survive Said The Prophet)さんとの出会い


――作曲時には、もうVocalはSurvive Said The Prophet(以下、サバプロ)のYoshさんに決定していたのですか?

植松 決まってた決まってた。音域も合わせて作曲してた。

――いつ頃決定したのでしょうか?

北瀬 収録が9月で、決まったのは6月ですね。

植松 あっ、そうだ。御社のスタッフが彼らのライブを観に、八丈島に行ってたのが7月で、それがレコーディングの直前だった。そうだ、結構ギリだったんだよね。さっき僕ファイル見たんだけど、曲が出来たのが7月11日になってるね。

――2019年の6月に決定して、7月に作曲、9月に収録!

野島 決まってから、Yoshさんのスケジュールから収録の日を割り出して、そこに合わせたって聞きました。

北瀬 そうですね。Yoshさんがバンドのライブで飛び回っていて、東京で収録出来るのがこの日、とお伺いし決めて行きました。

野島 で、僕の所に曲が来た時はかなり時間が無かった。

一同 (笑)

植松 いつものことじゃん!(笑)

野島 「大丈夫でしょうか?」ってメールに書いてあった。「ノー」って言えないじゃん!(笑)

北瀬 全ては僕の動き出しが遅く、みなさんには非常にご迷惑をお掛けしました。

植松 いやいや(笑)。

――いざ作詞!のタイミングはいつ頃だったのですか?

野島 え~、いつでしょうね。定かじゃないですが、8月のファイルとかがありますね。

――この時点ではもうストーリーは書き上げて、それに対して主題歌を書く様な状況でしたか?

野島 そうですね。まあちょこちょこシナリオも直したりしてたと思うんですけど、細かいレベルの話で、大筋においては。

――野島さんも、荒野、雨、クラウドのキーワードに合わせて書いて行ったのですね。

野島 そうです。

 

作詞に対する心構え


――英詞になる事が元々決まっていた訳ですが、その上で工夫した点などありましたか?普段の作詞と違うプロセスがあれば教えてください。

野島 普段はメロディを貰って、音の数を把握して、そこに言葉を乗っけてく、みたいな感じなんですけど、今回は最終的に英語になるって事で、あんまり気にしないで出来るんだろうな、と思って掛かったら、そうは行かなかった。なんかこう……気持ちが……それだと作詞している気にならないんですよ。

――歌詞じゃなくて、ポエムの方の詩になっちゃう?

野島 そう、そうなんですよね……で、結局、日本語でも歌える様な形に……。

植松 エッ、マジで!? そうなの!?

――頭の部分とか音に合っていますよね。

野島 メロディいただいて、出だしが「タン・タン・タン・タン」って音が4つしかなくて、サビも「ターン・ターン」って2つしか無いじゃないですか……日本語的に非常に辛いって言うか……。

一同  (笑)

――自らに縛りを課して……。

野島 サビの「ターン・ターン」に乗って来る日本語って、かなり限られるじゃないですか(笑)。

植松 何を乗せたの?そこに。

野島 そこはねえ、最後まで思い付かなくて、英語にしてた(笑)。

これは自分でも意外でしたね。発見でした。非常にぬるい気持ちで引き受けたんですけども、これはちゃんと合わせないとダメなんだなと思いました。

――日本語バージョンのリリースもあるかもしれませんね!?

野島 そっ、それは……どうなんでしょうね。そもそも日本語版は最初公開されない前提だったんですよ。

北瀬 そうだそうだ、確かに。

 

日本語原詞は公開予定では無かった!?


――そうだったんですね!? どのタイミングで公開が決定したのですか?

野島 トレーラーか何かの時でしたっけ?

北瀬 実際に曲が出来上がってから、最終的にディレクターの野村哲也が編集スタジオに入って曲をエンディングの映像に当てはめて、すごく良い作品が出来たんですけど、野村がそこで「やっぱり日本語も入れたい」と言って。当初は入れる予定は無かったんですけど、編集スタジオでの閃きがあり入れる事になりました。

植松 遊んでる人に伝わりやすいもんね。

――すごく伝わったと思います!野島さんは「日本語版公開されます」と聞いた時どう思いましたか?

野島 一応日本語でも歌える様には作ったんだけど、そこまで突き詰めて無かったんで……。

北瀬 そうね(笑)。

植松 ぬるい!(笑)

北瀬 最初に野島さんから歌詞の初稿を頂いた時、「一応日本語でも歌える様に書きましたけど、どうせ英訳になると思い、そこまで一音一音に合わせていません。そこは英訳の方が良い様にやってください」みたいなコメントもいただいていました……(笑)。

野島 そうですね。「字幕として出します」って決まった時、ちょっと直させてもらったと思います。

――そうなんですね。どの部分を直されましたか?

野島 いや~、記憶に無い……ですね。記憶も記録も破棄してしまいました(笑)。

――英語で聴いても沁みる歌詞だと感じましたが、字幕で日本語が出る事によって、英語だけでは分からなかった一人称を知る事が出来たり、更にグッと来る部分があった様に感じました。

北瀬 良かったじゃないですか!

野島 あ、でも、和訳が公表された事によって、歌の普遍性が減ったかな、とは思いました。

北瀬 むしろ曖昧にしたかったって事ですか?

野島 そうそう。

北瀬 なるほど。

――英訳に対して細かいやり取りや修正もされたのですか?

野島 それは私からは無いですね。

北瀬 どちらかと言うと、ディレクターの野村がリクエストを出していました。

一番最初に上がって来た英訳はすごく気合が入っていて、野島さんの日本語の歌詞の意味を汲み取って、いかに伝えられるかと言う様な、凝った文章的な表現だったんです。だけど野島さんの日本語の歌詞って、文章を並べ立てると言うよりは、ふわっと浮かんでくるワードをすっと受け取るような感じだった。なので野村哲也が、日本語の歌詞が持っている、一つ一つのワードがふわっ、ふわって現れる様な感じをもっと出して欲しいってリクエストを出して、途中の過程で単語が削られて、よりシンプルになりましたね。

――詰め込み過ぎだと感じた部分もシンプルにしたのですね。

北瀬 最初は一音に対して英単語が詰め込まれすぎている印象があったので、より日本語原詞の雰囲気が出た様に思います。

――植松さんはあがって来た歌詞を見てどう思いましたか?

植松 僕の所に来たのは英詞だけだったから、野島くんの日本語の歌詞見てなかったんだよね。

野島 YouTubeで観られます!(笑)

 

Yosh(Survive Said The Prophet)さん大抜擢


――VocalistがYoshさんに決定した経緯をお伺いさせてください。

植松 ゲームの主題歌の歌い手さんを決める時って、みんなで「あの人が良い」「この人が良い」って持ち寄って、延々と一つの部屋で見続ける……いつもの事なんですけど。

始めは沢山候補がいるんだけど、会議やメールでのやり取りを経て10組に絞れたり、その次は5組に絞れたりって……今回は最終的にYoshさんに決定しました。

色々聴いたけど、Yoshさんの声が一番ワイルドな感じがしたなあ。で、この人どんな音楽歌ってるんだろうと思ってYouTubeとか色々観てると、すごく色んな音楽やってんのね。音域もすごく広かったんで、これは面白いなあと思って。僕はYoshさん賛成でした。

――みんなで出し合った候補の中から全員一致で賛同されたのがYoshさんだった、と言う流れでしょうか?

北瀬 そうですね。事前に最終候補を絞り込む所までは、植松さんも野島さんも含めて一緒の会議でやって、あとは決定権を預けていただきました。候補は植松さんにも出してもらいましたし、スクエニからも、野村哲也も、サウンドセクションも、宣伝セクションも、色んな部からワーッと集めて、それをみんなで会議室に集まって選定して、最終的に絞られた3つの候補から、実際に先方のスケジュールを確認して行きました。

英語で歌う事が決まっていたので、発音がしっかりと海外の人にも伝わるとか、色んな要素を鑑みて、最終的には私が「サバプロのYoshさんに」って決めました。

――Yoshさんと初めてお会いした時のはレコーディングの時ですか?

植松 僕、一度事務所に来ていただいた事がありますね。

野島 その時、僕も行きました。

北瀬 僕はちょうどドイツのGamescomがあり出席できなくて……なので、僕はレコーディングの時に初めてお会いしました。年末の「COUNTDOWN JAPAN 19/20」にはサバプロを観に行きましたよ。

植松 すんげえ怖かったの、会う前(笑)。Web上での情報しか知らないじゃん。歌声と写真と動画しか見てなくて、怖い人かなぁ~と思って。

北瀬 偏見ですよ偏見!

植松 俺、会ったら胸ぐら捕まれて「オマエ、愛のテーマ歌ってみろよ」とか言われんじゃないかなってドキドキしてたんだけど、全然。実際に会ってみたらすごく良い人でびっくりしちゃった。

北瀬 すごく良い人でしたね。

 

レコーディングと変更点について


植松 うん、礼儀正しくって空気読めるしね。Yoshさんの一番すごいなあって思ったところは、空気読みながらも、自分のやりたい事をスクッと主張出来るんですよ。このスクッってのが重要で、誰も嫌がらないやり方で自分を表現出来るのね。すごい才能だなあと思った。

全然チャラくもないし、自分が音楽で表現したい事もちゃんと言うけど、周りを否定するでも無いし、こっちの意見もすごく真摯に聞いて乗っけてくれるし。実際のレコーディングの時でも文句も言わずに対応してくれました。気持ちの良い人でしたね。

――北瀬さん、野島さんもレコーディングはご同席されていましたよね。トレーラーでも笑顔溢れる良い雰囲気だった様に見えましたが、いかがでしたか?

植松 なんにもシビアな事なんて無かったよね。

野島 むしろ、同席していた翻訳のSabinさんの緊張がものすごく伝わってきましたね。所々、歌っている最中に「ここはどう歌い回すんだ」とか、なんなら歌詞自体をいじるみたいな所が何個かあったと思うんですけど……。

――歌詞に変更が出たんですね。

野島 意味は変わってないんだけども、単語とか、言い回しとか変えたりしてましたね。僕はもうそれを見ながら「日本語まで遡って直す」とかなったらどうしようとか思って……。もう「英語だけで良いんじゃないですか」と言おうと心に決めていた。

一同  (笑)

――シャットダウンしていたんですね。

野島 そう……セリフの収録とかでも、現場で書くプレッシャーは耐え難い物がありますね。

――北瀬さんにお伺いしたいのですが、レコーディングの段階では既にエンディングの映像は出来上がっていて、そこに音を乗せる形で収録していたのですか?

北瀬 映像はまだ出来ていなかったですね。すごく粗い状態の物はあったかもしれないですけども、まだカチッとした最終イメージは出来ていませんでした。

エンディングのスタッフロールで流したい、と言う事は決まっていたんですけど、主題歌が入るタイミングってすごく気を遣う所なんですよね。その入るタイミングまでは決まっていませんでした。曲が完成して、映像も完成して、野村哲也が最終編集する時に曲が入るタイミングも決まるし、日本語歌詞を字幕で載せようって言うのも決まりましたね。

 


 

現代の技術で蘇り、更に深みを増した『FF7R』。トレーラー発表当初から話題となった主題歌「Hollow」は、作品内で改めて触れると、更に印象深く刻み込まれる事間違いない。

是非、今回のインタビューの裏話たちを踏まえ、『FINAL FANTASY VII REMAKE Original Soundtrack』で噛みしめて味わっていただきたい。

 

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プロフィール


植松伸夫(うえまつ のぶお)

作曲家、有限会社スマイルプリーズ代表、株式会社ドッグイヤー・レコーズ 代表取締役会長。

「FF」シリーズをはじめ、数多くのゲーム音楽を手がける。

『FFVIII』のテーマ曲「Eyes On Me」は1999年度 第14回日本ゴールドディスク大賞でゲーム音楽としては初の快挙となる「ソング・オブ・ザ・イヤー(洋楽部門)」を受賞。

海外での評判も高く、「Time」誌の”Time 100: The Next Wave – Music”や「Newsweek」誌”世界が尊敬する日本人100人”の一人に選出される。

近年では日本国内をはじめ世界各国でオーケストラコンサートや自身のバンド”EARTHBOUND PAPAS”によるライブイベントを開催。

 

北瀬佳範(きたせ よしのり)

株式会社スクウェア・エニックス 第一開発事業本部長、『FINAL FANTASY VII REMAKE 』プロデューサー

1966年生まれ。アニメーションの制作会社を経て、スクウェア(当時)に入社。「FF」シリーズには『V』から参加。『FFVI』では初のディレクターを務め、以降、多数のシリーズ作で、ディレクターやプロデューサーとして制作を統括する。代表作『FINAL FANTASY V、VI、VII、VIII、X、X-2、XIII』、『MOBIUS FINAL FANTASY』他

 

野島一成(のじま かずしげ)

1995年に株式会社スクウェア・エニックス入社。在職中に『FFVII、VIII、X、X-2』のシナリオを担当。その後退社し、フリーランスのゲームシナリオライターとして『FFAC』、『メビウス』、『キングダムハーツI、II』のシナリオも担当する。関連小説も3冊発売中。『FFVII』の頃はシドと同い年だったが今やヴィンセントの実年齢くらい。ユフィくらいの子とはどんな風に接すればいいのかわからない。戸惑いながらも静かにキャリアを重ねている。プライベートではヘビーメタルをこよなく愛する。エレキギターを沢山持っているがうまく弾けない。

 

Yosh (Survive Said The Prophet)

Honda「シャトル」のCMで話題を呼び、人気アニメ『BANANA FISH』、『ヴィンランド・サガ』 の主題歌を担当したことでも知られる世界を股にかけるロックバンド「Survive Said The Prophet」、通称「サバプロ」のボーカリスト。。

またSawanoHiroyuki[nZk]にヴォーカリストとして参加しており、「BELONG」(小説/コミック”Fate/strange Fake”CMソング)、「Barricades」(劇場版「進撃の巨人」Season2~覚醒の咆哮~ エンディングテーマ)、「scaPEGoat」(TVアニメ『終わりのセラフ』EDテーマ)等でヴォーカルを担当し、脚光を浴びる。

バイリンガルというバックグラウンドから産み出されるシンガーとしての圧倒的な存在感とオリジナリティーはもちろんのこと、ジャンルに捉われないアプローチでメロディーメイクする新世代ソングライターとしての評価も高く、最近では『FINAL FANTASY VII REMAKE』のテーマソングを担当するなど、その活動のフィールドは多岐にわたる。

 

アネモネ・モーニアン

プロレスとゲームを愛する謎のおたくこと、元Dog Ear Records社員のなんでも屋。在籍時は植松氏のバンド「EARTHBOUND PAPAS」と共に世界を飛び回った。ボーカリストとして活動する傍ら、執筆・通訳翻訳、動画制作などをこなす。実は入社前に「月の明り-FINAL FANTASYIV 愛のテーマ-」オーディションにも参加していた。『FF7R』は日本語・英語ボイスでクリアし、原稿が落ち着いたらアメリカの親族のツテで入手した海外版で、初の試みであると言うドイツ語とフランス語のフェイシャルモーションを堪能する予定。

 

牧野良幸(まきの よしゆき)

愛知県岡崎市生まれ。大学卒業後にイラストレーター、版画家として活動。WEBや雑誌に自身の思い出にまつわる音楽や映画のイラスト・エッセイを書いている。オーディオ・マニアでもありハイレゾも毎日聴いている。


FINAL FANTASY VII REMAKE – スクウェア・エニックス(外部サイトへリンクします)